災害時の空き巣に備えるためにできる防犯対策、今できること・避難前にできること
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大きな災害が起こったとき、混乱に乗じて空き巣行為をする人たちがいます。
東日本大震災が発生したとき、各海外メディアからは「日本は災害があっても秩序を保つことができる国だ」と称賛されました。しかし同時期に、宮城県警では約7,500万円の現金が盗難にあったと発表しています。
2つの正反対のニュースが耳に入ると、災害時の防犯はどのレベルで行うべきか悩んでしまいます。が、やはり最善策は「大規模な災害が起こるのを想定した防犯対策を普段から行う」ことだと思います。
災害が起こってしまってから防犯対策をするのは、ほぼ不可能です。安全に過ごせるときこそ、防犯対策に取り組むチャンスです。
この記事では、災害時の空き巣被害を避けるためにできる対策を、平常時にできること、避難前にできることに分けて説明します。
目次
災害時の空き巣被害事例
災害時は、避難所へ避難したり帰宅が困難になったりと、家に誰もいない時間が増える傾向にあります。
自宅の窓やドアが破損したままのケースも多く、空き巣にとっては簡単に侵入できる機会となります。
東日本大震災などの大規模災害で実際にあった空き巣事例について説明します。
約1ヶ月間で被害総額は1億円に
宮城県警によると、東日本大震災が起こった2011年3月11日から3月30日までの間に、窃盗被害の届けが290件出されたそうです。
被害総額は1億円を超え、津波の影響が多かった地域を中心に被害が発生しました。
多くは、お店から商品を盗んだり車からガソリンを抜き取るなどの被害だったようです。それでも、個人宅への空き巣も約70件発生しました。
被害のほとんどは災害発生から数日内に起こります。人々が一番混乱しているときを狙うものと考えられます。
被害総額1億円のうち、現金は約7,500万円です。空き巣は、足がつきにくい現金を狙って盗むケースが多いです。
現金は、クレジットカードに比べて所有権が誰にあるかの証明が難しいからです。
慌てて安全な場所に避難するとき、とっさに自宅にある現金を持ち出せる可能性は低いです。住民が避難した留守宅の現金が狙われるのです。
広島土砂災害でも相次いで空き巣が発生
2014年に広島で土砂災害が起こったときも、被災した民家をターゲットにした空き巣が何件も発生しました。
流れ込んだ土砂でドアや窓が破壊され、侵入しやすくなっていたのが原因と考えられます。
また、室内にものが散乱したままの家が多く、空き巣が物色したあとがわかりにくいため通報が遅れたことも被害が拡大した原因のひとつです。
この災害が起こったとき、ちまたで話題になったのがSNSでのデマです。被災地で起こった空き巣被害が外国人グループによる犯行だ、などと事実とは違う内容の情報が拡散されました。
後日そのデマは否定されましたが、どの情報を信じていいのかわからなくなったと頭を抱える人がたくさんいました。
今すぐできる災害時の防犯対策
いざ災害が起こったときには、ゆっくり防犯対策をする時間はありません。なによりもまず命を守る行動をしなくてはなりません。防犯に割ける時間はごくわずかになります。
災害時に最善の行動をするためには、なにもない平常時にこそ防犯対策をしておく必要があります。
普段の防犯対策では不十分
災害時のための防犯対策をするにあたって、覚えておかなくてはならないポイントが2つあります。
- 電気・通信・インフラが遮断される可能性がある
- ドア・窓が壊れて施錠できない可能性がある
普段、ホームセキュリティを導入して防犯対策をする人も多いかと思います。
停電になればホームセキュリティの設備そのものが使えなくなってしまう可能性があります。そのほか、センサーライトや防犯カメラもすべて使えなくなります。
また、駆けつけサービスを利用しようとしても、被災地のインフラが遮断されている場合もあります。
緊急時に普段頼っているサービスが使えない可能性を考えなくてはなりません。
また、土砂や浸水、漂流物などによって家そのものが破壊されるケースもあります。窓が割れたり、ドアが壊れてしまうと空き巣が簡単に侵入できてしまいます。
災害時の防犯対策は、普段の防犯対策とは全く違うのを意識して行う必要があります。
停電が起きても自宅のセキュリティレベルが下がらないようにするためには、電源を使わない防犯対策を用意しておくと安心です。
玄関・窓にステッカーを貼っておく
ホームセキュリティを導入すると、警備会社から企業ロゴが入ったステッカーをもらえます。空き巣は、このステッカーの貼ってある家を避けます。
十分な防犯対策がなされている場合が多く、侵入が難しいと考えるからです。
災害時であっても、このステッカーには効果があります。たとえ停電が起きたとしても、空き巣はステッカーが貼ってある家よりも貼っていない家を選んで侵入する可能性が高いです。
ホームセキュリティを契約しなくても、似たような防犯ステッカーは多数販売されています。500円以内で買えるものも多いので、気軽に利用が可能です。
ステッカーを貼っておくと、自宅は十分防犯対策をしていると空き巣にアピールできます。
ただし、一度貼ったステッカーを長年放置したままにしておくのはよくありません。劣化してボロボロになったステッカーがそのままだと、空き巣に「以前は防犯対策をしていたが、現在はおろそかだ」と考えられてしまいます。
ステッカーは時間が経つにつれて、雨や日光で劣化します。定期的に見直して、ボロボロになったものは張り替えるのをおすすめします。
窓に補助錠をつける
空き巣の多くは窓から侵入します。窓についているクレセント錠は、本来窓を密閉するためのものなので防犯上の意味はありません。
地震などの災害があると、窓枠が歪んでクレセント錠自体が閉められなくなる場合もあります。
そのようなときに便利なのが補助錠です。窓に設置すると、二重に鍵がかけられます。電源を必要としないので、停電時でも安心です。
補助錠の一例として、ALSOKロックがあります。ALSOKロックは、ホームセキュリティ会社大手のALSOKが開発した補助錠です。
空き巣の7割以上が、窓の解錠に5分以上かかったら諦めます。ALSOKロックは、窓についた鍵を増やして空き巣に手間取らせ、諦めさせられる防犯グッズです。
窓に面する部分にはALSOKの企業ロゴが印刷されています。ステッカーと同じように、空き巣に対して威嚇が可能です。
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ソーラー発電式ライトを設置する
ソーラー発電式のセンサーライトをつけるのもおすすめです。センサーライトは、人が近づくとセンサーが反応して点灯する仕組みです。
多くのライトは家庭の電源につなぐものなので、停電になると使えません。ソーラー発電式のものを設置しておくと、停電のときでも利用できます。
空き巣は、特に音と光を恐れます。音と光があると、他人が自分の存在に気づいてしまうかもしれないからです。
光での威嚇はとても有効なので、災害時でも使えるタイプの導入をおすすめします。
電池とラジオを用意する
空き巣に侵入されないようにするためのテクニックとして、在宅であるとみせかける方法があります。
人が自宅にいるように見せかけると、空き巣被害のほとんどを撃退できます。
在宅であるように見せかけるには、
- 室内灯をつけっぱなしにする
- テレビなど音が出るものをつけっぱなしにする
などの方法があります。しかし、災害で停電になったら室内灯もテレビも使えません。そこで役立つのがラジオです。
ラジオには電池式のものが多く、電源が使えなくても音を出せます。ラジオをつけっぱなしにしておけば、人がいるように見せかけられます。
防犯対策に関わらず、ラジオがあれば多くの情報を手に入れられます。防災グッズとして自宅に1つは置いておくとよいかと思います。
また、停電で電気が使えないときも、電池があれば使えるものも多いです。ラジオと合わせて電池もストックしておくのをおすすめします。
ラジオ以外にも、便利な電池式防犯グッズがあります。電池式の窓用アラームもその一つです。窓を割ろうとする強い衝撃に反応して、大きな警報音を鳴らします。
電池式なので、停電時でも問題なく作動します。
ただし、電池式グッズには定期的な点検が必要だというデメリットがあります。電池が古くなると、いざというときに作動しない可能性もあるので、こまめに点検を行います。
貴重品・緊急グッズは避難ルートに置いておく
いざというときに持ち出すための緊急グッズを自宅に常備する方は多いかと思います。しかし、その緊急グッズの置き場所はどうしているでしょうか。
また、避難時に持ち出すための貴重品の置き場所も重要です。
多くの方は、大事なものを盗まれないように、家の奥においているかと思います。しかし、それではいざ災害が起こったときに、持ち出しに手間がかかります。
貴重品や緊急グッズは、普段生活するリビングから、脱出する扉までの通り道にある部屋においておくのがおすすめです。
通り道においておくと、よりスムーズな避難が可能です。
貴重品や緊急グッズの置き場所は、こまめに家族で確認しておきます。その他、避難所の場所や連絡の取り方も打ち合わせておくと、万が一のときに慌てずに済みます。
災害時は1分1秒の判断の遅れが命取りになります。常日頃から、災害が起こったらどうするかを考えておくのが重要です。
災害が起こったときにできる防犯対策
いざ災害が起こったときには、命を守るための行動が最優先になります。そのため防犯対策のためにできることは限られています。
そのなかでも特に行うべき行動についていくつかまとめます。
しっかりと戸締まりする
避難時であっても、施錠は大事です。自宅のすべての鍵がかかっているかどうか確認してから、出るようにします。
雨戸やシャッターがある場合は、それらも閉めてから外へでます。雨戸やシャッターは、空き巣から家を守ってくれるだけでなく、自宅を災害から守ってくれます。
また、室内の目立つところに貴重品が置きっぱなしになっていないか確認します。目立つところ、特に外から見える場所に貴重品が置きっぱなしだと、空き巣のターゲットにされてしまいます。
貴重品は一緒に持ち出すか、目のつかないところに置いておくようにします。
ただし、危険が迫っているときは命が優先です。時間が残されていない場合は、完璧な戸締まりは求めず、すぐその場を離れるようにします。
必ず命を一番大事にしてください。
在宅をよそおう
テレビやラジオ、ライトなどをつけっぱなしにして、自宅にいるように見せかける方法があります。特にラジオやソーラーライトは、停電時でも使えるのでおすすめです。
ただし、予備の電池や電源が少ないときの無理は禁物です。在宅をよそおうのが難しければ無理をせずに、他の防犯対策でカバーします。
たまに自宅の目につくところに「◯◯避難所にいます」と張り紙をする人がいます。連絡手段が少ないなか、張り紙は重要な連絡ツールになります。
しかし、これは空き巣に不在であることを教えるのに繋がります。空き巣のターゲットにされかねないので、避けた方がいいです。
緊急時の連絡方法を事前に家族で決めておくと、スムーズに連絡できます。
いかに平常時に対策しておくかがポイント
実際に災害時の防犯対策について書き出してみて、災害発生時にできることの少なさに驚きました。
いざ災害が起こったときには、誰もが慌ています。防犯対策など、家中の鍵を閉めて回るくらいが精一杯なのではないでしょうか。
災害が起こったときに慌てないためには、普段どれだけ対策をしておくかが重要だと思います。事前に対策をしっかりしておけば、いざ災害が起きても「十分な対策がされている」と自信をもてます。
災害発生時には、心の余裕を持つのが難しくなります。空き巣という一つの心配要素をなくせるのは、大きな意味があることだと思います。
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